暮沢 剛巳 (くれさわ たけみ)
1966年生まれ。美術評論家。
武蔵野美術大学、多摩美術大学、女子美術大学、跡見学園女子大学、桑沢デザイン研究所非常勤講師。
著書に『美術館はどこへ』『「風景」という虚構』『美術館の政治学』『現代アートナナメ読み 今日から使える入門書』、近刊に『現代美術キーワード100』(仮題)がある。
ル
月世界旅行
Le Voyage dans la Lune

フランスのジョルジュ・メリエスが監督・脚本を担当した映画。1902年製作。1秒につき16フレームのコマが上映されるモノクロ・サイレント仕様で、上映時間は16分。大砲の弾丸に乗って月に行った人間が月世界の人間と出会う物語で、ジュール・ヴェルヌの同名の長編小説(原題:De la Terre à la Lune)及びH.G.ウェルズの長編小説『月世界最初の人間(The First Men in the Moon)』を原作として大幅な翻案を加えている。1895年にリュミエール兄弟によって発明された映画は、最初期にはありのままの光景をそのまま映すだけのメディアだった。メリエスも当初はそうした映画を製作していたが、この作品の製作に際しては、機械の故障から偶然に思いついたトリック撮影を導入して弾丸の着弾などを効果的に演出し、多くの観客の圧倒的な支持を得た。そのほかにも、世界初のSF映画(当時は「魔法映画」と呼ばれていた)とされるこの作品は、原作を基にした脚本によるストーリー展開や複数のシーンの存在、固定カメラによる演劇的な演出など、ほかにも複数の画期的な性格を持っていた。メリエスは世界初の職業映画監督としてその後しばらくの間映画界をリードしていく。



