サイバネティックス

[ 1940年代, ]

生理学、機械工学、通信工学などを束ねた新しい学問。別名を自動制御学ともいう。1948年、アメリカの数学者ノーバート・ウィナーが同名の書物によって提唱した。もともとは「技」や「舵取り」を意味するギリシャ語キベルネテス(Κυβερνήτης)に由来する概念であり、19世紀にはフランスの科学者アンペールが政治学の制御法としてのサイバネティックスを提唱したこともあるが、ウィナーはこの概念をテクノロジーへと適応し、生体が環境に順応するために駆使しているさまざまな技術や制御法を機械にも応用することができる考え、情報のフィードバックによる自動制御を提唱した。その核心は、1-調整部「管理する機械そのものがもつシステム」、2-操縦部「機械を操縦する人間の誤差修正のシステム」、3-統治部「人間を指導する集団のダイナミズムをふくむシステム」という3つのシステムの統合が必要であるという見解にまとめられている。この概念は情報科学や人体工学はもとより、神経学や経済学など多くの分野に強い影響を与えたが、ハイデッガーによるウィナー批判をはじめ、ややもするとテクノロジー礼賛に見えるその方向性に対する懐疑的な見方も初期の頃から存在した。

サイバースペース

[ 1980年代, ]

『クローム襲撃』 『クローム襲撃』 
ウィリアム・ギブスン 著
浅倉久志・他 訳
(早川書房)

コンピュータ・スクリーンの内側を空間に見たてた比喩的な表現。サイバネティックスと空間を組みあわせた造語で、日本語ではかつて電脳空間や仮想空間と翻訳されることが多かった。SF作家のウィリアム・ギブスンがSF小説『クローム襲撃』(1982)や『ニューロマンサー』(1984)のなかではじめて提唱したこの概念は、当時は空想の世界の出来事と思われていたが、その後本格的なインターネット時代を迎えて身近なものとなり、ギブスンの先見性が証明された格好となった。コンピュータの内側を無限の空間に見たてたこの発想は多くのアーティストやデザイナーの想像力を刺激し、油彩や水彩とはまったく異なる質感をもつコンピュータ・グラフィックス(CG)、膨大な量の作品画像が収録されたヴァーチャル・ミュージアム、現実の空間ではありえない形態でもデザインすることのできるヴァーチャル・アーキテクチャーなどの新しい表現が生みだされた。今日のメディアアートにとっても欠くことのできない空間だが、21世紀の現在でも、テクノロジーの発達に対して法整備は大きく遅れている。

ページ上部へ戻る

Pick Up Archive 今こそ読みたい。これまでの記事をご紹介

中村 勇吾

巨匠インタビュー
中村 勇吾

ボツになるほど、引き出しが増えていくということですから...

トーチカ

作家インタビュー
トーチカ

作品をつくろうと思ってつくったものじゃないんです。始まりは...

竹宮 惠子

巨匠インタビュー
竹宮 惠子

スランプでも描くことをやめなかったことが、一番私を救ったと思う...

渋谷 慶一郎

コラム:データミュージアムは可能か? 渋谷 慶一郎

電子音楽とメディアアートの関係について考えてみると、その2つの...

押井 守

巨匠インタビュー
押井 守

実写であれ、アニメであれ、僕が一貫してやってきたことは...