水平でない全てのベクトルは、必ず地球を貫通する。そんなスケールの世界を『GLOBAL BEARING』というダイナミックな作品で表現した平川さんは、同作で第8回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞を受賞した。その後も柔軟で斬新な思考をもとに、インスタレーションの可能性を探りつづけている。そんな平川さんに、プライベートや作品の制作、着想、文化庁メディア芸術祭との関わり、そして今後の展開についてうかがった。
――アイデアやコンセプトは、どんなときに生みだされるのでしょうか?
作品のコンセプトは、たえず複数かかえています。以前は、ひとつのものに集中していましたが、最近は分けるようにしているんです。たとえば、いま実際に制作している作品はひとつですが、それをつくりながら、4〜5つくらいある次回作のことを考えたりもします。もちろんアイデアだけならば、もっとたくさんあります。
ぼけーっとしているときに、アイデアが浮かんだりします。なにげなく頭に浮かんだアイデアをメモで書きだし、そのメモを何枚か書いているうちに、だんだんまとまっていくという感じですか。
いろんなことを考えるわけですが、「あっ、先にやられてる」ということは、けっこうありますね(笑)。自分が思いつくことの大半は、すでに誰かがやっていると思っていいでしょう。

――自分の作品が他者に評価されることについて、どう受け止めていますか。
作品の評価が技術的な話になってしまうのが、もっともつまらないですね。「この仕組みは、どうなってるんですか」なんて質問をされても、困ってしまいます。
作り手としては、技術的な面は重要な話ですが、作り手が作品を見た人から技術的なことを聞かれても、複雑な気分になります。もちろん作り手同士なら、盛りあがるネタだと思いますが。
逆にいうと、見せている作品に力がないからこそ、作品の技術に関心が向いてしまうのだともいえるんですけれど。すごい作品っていうのは、老若男女を問わず、誰が見ても聴いてもすごい作品であるべきです。
予備知識があったうえでアート作品を見て、理解するということも必要なことです。しかし、予備知識なしでも、見た人に何かしらのインパクトを与えられるような作品を、僕はつくっていきたいです。
――どのような動機でメディア芸術祭に応募したのですか?
自分の作品を一般の人たちに見せる場所がほしかったというのが、文化庁メディア芸術祭に応募した最大の理由です。僕の作品は広い空間が必要なものが多いので、展示する場所が限られてしまうのも、理由のひとつです。
たとえば、『GLOBAL BEARING』は大学の卒業制作なのですが、そのまま放っておけば、学内で展示されて終わってしまいます。そこで終わらずに、他にも見せる場所がないかと考え、応募することにしました。
――受賞後に手がけた作品についてお聞かせください。
2005年に『DriftNet』という作品をつくりました。これはICC(NTTインターコミュニケーション・センター)に展示されています。あと、2006年にはせんだいメディアテークで、『compath』という作品を滞在制作でつくり、今年に入ってからは、大学院の卒業制作で『a plaything for the great observers at rest』をつくりました。
最近では、日本科学未来館の「地下展 UNDERGROUND――空想と科学がもたらす闇の冒険」(〜2008年1月28日まで)という展示で、『46億年の時計』の制作を担当しました。音楽家の方とコラボレーションをすることもあります。ひとつのテーマを決めて、いろいろ話しあいながら、彼らが音楽をつくり、僕が映像をつくります。
受賞してからは、自己紹介をしたときなどに、いろんな人から「メディア芸術祭で作品を見ました」といわれることが多くなりました。
――今後、どのような作品を制作していこうと考えていますか?
自分が見て、おもしろいもの。自分が楽しめるもの。
たまたま手元にあったから、いまはコンピューターを使っています。しかし、何か別のものを使ったうえで表現することも、これからは考えていきたいですね。
考えていることと、それがかたちになることのあいだには、いろいろなパターンがあります。そのパターンのなかに、おそらく最適なものがあるのですが、もしかしたらコンピューターが介在しないパターンもあるのではないか。いま、そういうことを考えています。
――最後に、メディアアートを目指す人たちへメッセージをお願いします。
メディアアートをやっているからといって、「メディア」という枠組みにとらわれず、やりたいことを自由にやってみるのがいいと思います。とにかく、自分がおもしろいと思っていることをやるのが一番です。




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