Vol.2 藤木 淳

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PCの画面上に、ブロックで立体をつくり、落とし穴をつくる。そして、あり得ないような動きをする人たちが、画面上を歩き回る…。まるで、だまし絵のような世界が、目の前で展開される『OLE Coordinate System』。藤木さんは、このソフトウェアで第10回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞を受賞した。自分が発見したことを多くの人に共有してもらう。そんなテーマで作品をつくりつづけている藤木さんに、作品のコンセプトや制作、着想、文化庁メディア芸術祭との関わり、そして今後の展開についてうかがった。

[Interview 1] interface & interactive

――まず、藤木さんにとってのインターフェイスとは何か、教えていただけますか?

OLE Coordinate System
インターフェイスというものは、ひとつの接点だと私は考えています。具体的には、自分の発見を受け手の人たちと共有する。そのための、ひとつの表現ということです。

――では、インタラクティブアートとは?
私は、インターフェイスとインタラクティブ(双方向、対話)というふたつの言葉を、区別して使っていません。ただし、作品をインタラクティブにしている理由はあります。
私の作品は、しばしばエッシャーの作品に似ているといわれます。私自身は、エッシャーを意識したことはなかったのですが…。エッシャーの作品は静止画ですよね。また、その静止画を意識してつくられた動画も、すでに存在します。それらは、表現方法のひとつとしては、すぐれたものだと思います。そして、私自身も表現することは大事にしようと考えています。
ただし、私の場合は、ただ単に表現するだけでなく、その表現を成り立たせている手段(プログラム的なアルゴリズム)も受け手に伝えたいんですね。つまり、この作品には原理があるということを、受け手に感じてもらいたいと思っています。だからこそ、インタラクティブということにこだわっているのです。

――コミュニケーションに関心があるから、双方向性にこだわるということですか?
コミュニケーションに何か問題がある「から」、それを解決する手段として作品をつくっているというわけではありません。逆に、自分の発見を受け手の人たちと共有する手段が、たまたまインタラクティブなコミュニケーションになっているのです。そのコミュニケーションは、言葉ではなく事象のようなもので行なうものなのですが。

[Interview 2] idea

――インターフェイスやインタラクティブアートとの出会いはいつ頃ですか?
それらを意識しはじめたのは、おそらくレゴブロックで遊んだ幼児期や、ゲームブックをやっていた小学生の時期だと思います。

――いつ、どこで、作品の着想を得るのでしょうか?
「これをつくろう」などと意気込むと、思いつかないんですよ(笑)。大学に通う途中や風呂に入っているとき、そして寝る前など、日常の何気ない瞬間に作品のアイデアが思い浮かんだりします。ようするに、私が着想を得る瞬間は、流動的であり、かつ場所を選ばないということになります。
きっちりとしたアプローチで臨むよりも、手探りをしながら作品のコンセプトを固めていくことのほうが多いです。たとえば、『OLE Coordinate System』ですが、はじめは錯視用のブロックは、ほんの数個でした。しかし、思案を重ねていくなかで、ブロックの数がどんどん増えていきました。

――作品を制作する過程で、楽しかったことや苦しかったことを教えてください。
作品に取り組んでいるときは、つねに楽しいですよ。私のやっていることは、はっきりいって趣味の延長のようなものですから。
とはいえ、表現を思いついたはいいがそれを実現する仕組み(アルゴリズム)がさっぱり分からないとき苦労します。

[Interview 3] Japan media arts festival

――メディア芸術祭に応募した動機は?
学生CGコンテストへの応募は、大学院の指導教官がすすめてくれました。
そして今回は、自分で応募しました。応募した理由ですが、つくったものを、より多くの人に見てほしいという気持ちがありました。あと、審査員の方々に自分の作品がどのように評価されるのかを知りたかったんです。

――今回の作品は、汎用性にこだわっているんですね。
私の作品は、基本的にウェブ上で見れますし、動かすことができます。とはいえ、いままでつくった作品は、OSがウインドウズのパソコンでしか動かなかったんですよ。でも、もっと多くの人に見てもらいたい。よって、今回の作品からはマックでもリナックスでも見たり動かしたりできるようなものにしてみました。

――「エッシャーの作品に似ている」といわれることについて、どう思っていますか?
第7回学生CGコンテストで入賞したあたりから、二次元の画面上で三次元的な世界をつくりだすことをテーマにしています。この二次元と三次元のギャップというものに、私は興味があるのです。そのギャップを作品に反映しているうちに、「そういえばエッシャーみたいだなあ」と思いました。
ですから、作品でエッシャーの世界を再現しようと思ったわけではありません。作品ができあがってみたら、たまたま似ていたんですよ。でも、人に説明するときには、エッシャーの名前を出します。そのほうが、わかってもらいやすいですから。

――受賞後は、どんなお仕事を手がけていらっしゃるのですか?

無限回廊
無限回廊
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ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)と一緒に、『OLE Coordinate System』を基にしたゲーム「無限回廊」を開発しています。昨年度の第10回文化庁メディア芸術祭で私の作品を知ったSCEの鈴木達也プロデューサーが、声をかけてくれました。ちょうど1年前のことですね。このゲームは、3月19日に発売される予定です。ゲームの内容は、「錯視」をつかってキャラクターをゴールに導くような感じのパズルです。
鈴木さんによると、エッシャーの世界をゲームに取り入れたいと思っている人が、ゲーム業界にけっこういるそうなんです。でも、いままでそれが実現できなかった。それで、私の作品を見た鈴木さんが、「これならそれができるかもしれないと思った」とおっしゃっていました。
とにかく、自分の作品がゲームになるなんて意識していませんでしたので、この話があったときにはびっくりしました。