江渡浩一郎《モジュローブ》2005
【開催期間】 2007年4月19日(木)〜2008年3月9日(日)
【会場】 NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]
「コミュニケーション」をテーマに、テクノロジーとアートの対話を促進する目的で1997年にオープンしたICCは、今年で10周年を迎えました。数々のメディアアート作品に無料で触れることができる常設展『オープン・スペース』は、4月に展示作品をリニューアル。さっそく『オープン・スペース2007』に行ってみました。 「ふらっとたまたま立ち寄ってくれた人が、これをきっかけにメディアアートを知ってくれたら」と語るのはキュレイターの畠中実氏。「最新技術を応用した表現手法や芸術作品に触れていただくための "導入部" として位置づけているのが『オープン・スペース』です」
展示は、「ネットワーク」「アート&テクノロジー」「研究開発」「アーカイヴ」 という4つのゾーンとコーナーにわかれています。入り口を入ると、まず目にするのが「ネットワーク」ゾーン。ここではネットワーク技術を巧みに利用した作品が展示されています。橋本弘太郎氏の『Sharelog』では、自分が持っているSuicaやPASMOを端末のリーダーにかざすと、交通機関の利用履歴を読み出し、大きなスクリーン上の地図にその軌跡が投影されます。自分が過去にどんな範囲を移動したのかが一目瞭然。これは不特定多数の人がデータを入力してつくりあげていく、新しい時代のパブリックアートと呼べるかもしれません。
交通機関の利用履歴がアートになる
橋本弘太郎,dpa project,科学技術振興機構,東京大学《Sharelog》2006
そして上の展示室に上がる階段も、なんとメディアアートになっていました。これは「Gainer(ゲイナー)」というインターフェイスを利用した『ゲイナーカイダン』という作品。階段の端についている赤外線センサーによって、人が階段を歩くと、パタ、パタと足音が鳴るしくみです。センサーに触れた状態で数秒間動かずにじっとしていると、バタバタバタッと足音だけが勢いよく階段をかけあがっていくしかけも。スパイごっこのように、センサーに触れないで歩こうとする子どもたちもいるようです。
上階の展示室にも、見応えのある作品がたくさん展示されていました。平川紀道氏の『DriftNet』は、スクリーンに広がる巨大なCGの波。これはインターネットというバーチャル空間で、コンテンツとして閲覧されるデータをもとに生成した映像です。スクリーンの前に立って身体を動かすと、情報の波が動きに反応してザッパーンと押し寄せてきます。その波の諸条件で次のサイトが特定され、新たな波が作成されます。まさに文字通り、身体でネットサーフィンをするかのようです。
ネットサーフィンを全身で体感 平川紀道《DriftNet》2005
クワクボリョウタ氏の『PLX』は、直立したスクリーンを挟んで2人で対戦するゲームのような作品。相手のスクリーンは見えないため、一見、2人で同じゲームをプレイしているように思えます。ところが、実際には片方が犬が骨をキャッチするゲームなのに対して、相手は海底で宝箱を開けるゲームという、同じプログラムを介していながら異なるゲームで対戦しているしくみになっているのです。
「ウィトゲンシュタインという哲学者が "言語ゲーム" ということを述べていますが、人間の言語もあるルールにのっとって、しゃべられているゲームに過ぎないものです。私たちの日常会話においても、同じことを話しているつもりが、お互いに別の内容を話していたということがありますよね。この作品では、そうした他者とのコミュニケーションのズレをゲームという形で表現しているのです」(畠中氏)
これまでにない新発想のゲーム クワクボリョウタ《PLX》2001
そのほかにも、ゆらゆらと揺れる球体が放つ光の色の変化によって、壁面の色彩の見え方も変化するという幻想的な作品『オプティカル・トラジェクトリー2』(武藤努氏)や、鏡の中の自分と対戦するホッケーゲーム『スルー・ザ・ルッキング・グラス』(筧康明氏+苗村健氏)など、さまざまな作品に触れることができます。また、第1回の文化庁メディア芸術祭でデジタルアート[インタラクティブ]部門で大賞を受賞した『KAGE』(minim++)がさらにバージョンアップされて展示されていますので、こちらもお楽しみに。
ICCでは2007年7月14日から9月2日まで、ギャラリースペースにて『ICCキッズプログラム2007』が開催されます。これは昨年からスタートしたプログラムで、展示やワークショップなどを通じて最新テクノロジーの可能性を体験することで、子どもの創造性と創造力を伸ばすことを目的としています。また、今年は10周年を記念した数々のイベントやコンサート、シンポジウムなども行われる予定です。今後もますます目が離せないICC。これだけ見応えのある作品が展示されていて、しかも無料で楽しめるというのが 驚きです。皆さんもICCでメディアアートを体験してください。





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