vol.11 ICC オープン・スペース 2008

  • 展覧会ガイド
  • キュレイターの声
【写真】gravicells[グラヴィセルズ]―重力と抵抗

三上晴子+市川創太《gravicells[グラヴィセルズ]―重力と抵抗》2004年-

ICCに足を踏みいれた瞬間からはじまる アート&テクノロジーの驚きと楽しさ!

インタラクティブ、オートマタ、プロセス…。なんとなく難しく、とっつきにくく感じてしまうそれらの言葉を、自分の目や耳、身体を使って楽しく理解できるICC「オープン・スペース」。よりグローバルに、より幅広い作品が揃った「オープン・スペース 2008」の様子を駆け足でガイドします。

幅広いジャンルが揃った、充実の展示作品

「オープン・スペース 2008」は、昨年同様、「アート&テクノロジーゾーン」「研究開発コーナー」「ネットワークゾーン」「アーカイヴゾーン」の4つで構成されています。 エントランスに足を踏みいれた瞬間、視界に飛びこんでくるのは曲線のボードに写しだされる美しい光。「ネットワークゾーン」のはじめの作品、『フラッシュを使用しない撮影は許可されています。』です。肉眼で見るとまたたく星空のようですが、カメラでシャッタースピードを1秒に設定して撮影すると、撮影した写真にはアルファベットの文字が映しだされているというから驚きです。カメラを持っていなくても、作品の左横にあるモニターで、描き出されている文字を確認することができます。

【写真】フラッシュを使用しない撮影は許可されています。

【写真】フラッシュを使用しない撮影は許可されています。

セミトラ《フラッシュを使用しない撮影は許可されています。》2008年

エントランス奥の階段をのぼり、「アート&テクノロジーゾーン」のフロアへ。 『計算の庭』は「×3」「+5」などの数式が書かれたいくつもの白いゲートが目をひく巨大アート。RFIDタグが内蔵された数字のカードを首からさげて計算式が書かれたゲートをくぐると、コンピュータが自動的に計算してくれるという作品です。ゴールするためには答えを「73」にしなければなりません。上手にゲートをくぐれば、最低4回の計算でゴールできるそうですが、これがなかなか難しい。頭を使いながらゲートをくぐっていると、自分自身が数字になった気分に。右往左往している自分も作品の一部だと気づかせてくれます。(『計算の庭』のみ、展示は2008年8月31日までです。)

【写真】計算の庭

佐藤雅彦+桐山孝司《計算の庭》2007年

薄暗いスペースに学習机と椅子が置かれた『センシティヴ・モメンツ』は、「ナラティヴ(物語)」をキーワードにしたインタラクティブ・アート。目の前にはフランスの思想家ジャン=ジャック・ルソーのテキストが流れ、学習机の上で手を動かすと映像が変わったりテキストが進んだりしていきます。ルソーの美しい文章とそれにマッチした魅力的な映像が心を惹きつけます。活字とイメージ映像をみずからの手で進めていく不思議な感覚は、新時代の読書といった雰囲気です。

【写真】センシティヴ・モメンツ

ジャン=ルイ・ボワシエ《センシティヴ・モメンツ》2000-08年

全身を使ってメディアアートの世界を体感!

「アート&テクノロジーゾーン」の展示室を歩いていると、テーブルの上に並んだ表と裏を白黒それぞれにぬりわけられたパネルが突然音をたてて動きだしてびっくり。ICCビエンナーレ’99準グランプリを受賞した『インタラクティヴ・フィールド』は、西洋からくり人形を指す「オートマタ」をイメージした作品です。人が近づくと赤外線センサーが感知し、ときには半面のみ、ときには一斉にグルグルと回り出すモノトーンのパネルは、まるでダンスをしているかのよう。近づくたびに違う動きを見せるので、何度見ても飽きません。また、多くの観客が作品をぐるっと囲むことで、あらかじめプログラムされた動きが選択されて再生されるとのこと。ぜひその動きを目撃してみてくださいね。

【写真】インタラクティヴ・フィールド

マーティン・リッチズ《インタラクティヴ・フィールド》1999年

続いては、ソファーとテーブルが置かれた展示室へ。テーブルには白とグレーのボタンがついた不思議なアイテムが置かれています。キラキラと白く発光するLEDボタンに触れることで、直感的に音楽を奏でることができる最新楽器『TENORI-ON』です。ヘッドフォンを装着してLEDボタンをなぞると、柔らかく響く不思議な電子音が全身に響きわたります。256個のボタンをなでるように押してみたり、ハート型や星形を描いてみたり。ボタンを押すごとに幻想的な音色が飛びだします。

【写真】TENORI-ON

岩井俊雄《TENORI-ON》2007年

新しいデジタル音楽を楽しんだあとは、全身を使ったインスタレーションを体験。『gravicells[グラヴィセルズ]−重力と抵抗』 (三上晴子+市川創太)は、複数の衛星から会場の位置を計算したGPSデータと床下のセンサーにより、目に見えない重力を映像で表現。床と巨大なモニターに映しだされた無数の線が、体験者の動きによってリアルタイムで画像や音、光に変換されます。作品内に足を踏みいれると床とモニターに映しだされたラインが歪んでいきます。数人でパネル上をウロウロすると、モニターの映像がダイナミックに変化。自分が作品を動かしているという不思議な感覚に、時間を忘れて体を動かしてしまいます。

最新技術を間近に感じる研究開発コーナー

続いて訪れたのは「研究開発コーナー」。『マイクロ・プレゼンス』は、モニターに写っている小さな虫にタッチし続けると、どんどんとクローズアップして肉眼では見ることできない昆虫のアップに! ウロコのような皮膚、そこから伸びる毛など、細部のひとつひとつが鮮明に映しだされた昆虫は、まるで新しい怪獣のようです。

【写真】マイクロ・プレゼンス

小檜山賢二+森田正彦+齋藤達也+上村周平 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス 小檜山研究室 《マイクロ・プレゼンス》 2008年

その横で輝くメタリックな作品は、『ウルバニュス(メス)幼虫(学術名:Anmopista Volaticus Floris Uram)』。都市に生きる新しい生物という架空のストーリーを持つこの彫刻は、ひらたく言えば金属でできたロボット。それなのに、本当に呼吸をしているかのような静かでナチュラルな動きを見せてくれます。生命体のように見えるその技術力とアート性の高さは必見です。

【写真】《変種ウルバニュス(メス)(学術名:Anmopista Volaticus Floris Uram)》《ウルバニュス(メス)幼虫(学術名:Anmopista Volaticus Floris Uram)》

チェ・ウラム《変種ウルバニュス(メス)(学術名:Anmopista Volaticus Floris Uram)》2007年
《ウルバニュス(メス)幼虫(学術名:Anmopista Volaticus Floris Uram)》2008年

『情報を降らせるインタフェース』は、新時代の映像技術を使った新しいコミュニケーションツールです。人間の肌の色にしか反応しないという特殊なシステムが使われていて、プロジェクターの下に手をかざすと、人間や星、動物などが映しだされます。右手に輝く花束を左手に移したり、映像同士を組みあわせたりすることもできるので、友だちと映像を交換したり、合体させたりして楽しむのもいいですね。

【写真】情報を降らせるインタフェース

石井陽子+中茂睦裕+小林稔 NTTサイバーソリューション研究所《情報を降らせるインタフェース》2007年

多種多様な作品が展示されている「オープン・スペース 2008」。ぜひ会場を訪れて、お気にいりの作品を見つけてみてください!

ページ上部へ戻る

Pick Up Archive 今こそ読みたい。これまでの記事をご紹介

中村 勇吾

巨匠インタビュー
中村 勇吾

ボツになるほど、引き出しが増えていくということですから...

トーチカ

作家インタビュー
トーチカ

作品をつくろうと思ってつくったものじゃないんです。始まりは...

竹宮 惠子

巨匠インタビュー
竹宮 惠子

スランプでも描くことをやめなかったことが、一番私を救ったと思う...

渋谷 慶一郎

コラム:データミュージアムは可能か? 渋谷 慶一郎

電子音楽とメディアアートの関係について考えてみると、その2つの...

押井 守

巨匠インタビュー
押井 守

実写であれ、アニメであれ、僕が一貫してやってきたことは...