vol.12 モバイルアート

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キュレイターの声

Stephan Crasneanscki for CHANEL, Fabrice Bousteau, New York, November 2007

ファブリス・ブストー
「モバイルアート」キュレイター

「モバイルアート」は、いままでとはまったく違う展覧会です。展覧会というよりは、もしかしたら、風景や映画に近いのかもしれません。というのは、私は、美術館に作品をただ展示するような展覧会をするつもりはまったくなく、世界の偉大な都市空間に「アクセス」して、移動することのできる風景、あるいは人々が入ることのできる心地よい空間をつくろうとしたからです。そのような空間で、鑑賞者の認識や世界観を変えることができたらおもしろいのではないか、と考えました。

もうひとつのイメージは、映画のなかを歩きまわることのできる、立体映像のような感覚。決して映画館の座席に座って、スクリーンを凝視するのではなく、自らが映画の主人公となって動きまわります。そのため、通常の展覧会のように自由に見てまわるのではなく、サウンドウォークによる音声ガイドを聞きながら、アートの物語のなかを回遊する、というスタイルになっています。

©Zaha Hadid Architects

今回、私たちが参加アーティストに提示したテーマは、シャネルのキルティングバッグでした。バッグは、人が放浪するのに不可欠なものだと思います。誰もが自分の持ち物や、秘密をバッグに入れますよね。どんな文明でも、遊牧生活は道具や知識を携行するバッグからはじまりました。つまり、文明の基礎のひとつは、バッグであるといえるわけです。シャネルのデザイナーのカール・ラガーフェルドが、このプロジェクトを「モバイルアート」と名づけたのには、明確なヴィジョンを感じます。私は、アートは人類の思考のもっとも自由な領域だと思っているのですが、実は、バッグはそうした知識をつめこんで、自由に持ちはこぶことができる道具でもある、と考えることができるからです。

サウンド、インスタレーション、建築と、「モバイルアート」はメディアのさまざまな可能性を鑑賞者にお見せすることができたプロジェクトだと思います。その新たな可能性を、訪れた方々に五感で楽しんでいただけたのであればうれしいです。

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