vol.14 ネオ・トロピカリア:ブラジルの創造力

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オスジェメオス 『ライフがフォームになるとき』2008

オスジェメオス 『ライフがフォームになるとき』2008

「生きることの喜び」にあふれた、陽気でトロピカルなブラジルのアートを体験!

今年、2008年は「ブラジル移民100周年」と「日本ブラジル交流年」として、各地でブラジル関連のイベントが行なわれています。そのなかでもひときわ大規模な展覧会が、東京都現代美術館で開催されている「ネオ・トロピカリア:ブラジルの創造力」です。これは、1960年代に「熱帯に住む者の文化のオリジナリティ」をうたい「トロピカリア」という概念を打ちだしたエリオ・オイチシカをはじめ、27組のブラジルのアーティストやクリエイターの作品を紹介する展覧会です。「生きることの喜び」を伝えるブラジルの表現は、豊かな色彩と、しなやかで有機的な形にあふれているのが特徴です。

トロピカルな色彩と音楽のあるアート

まず、展覧会を訪れた人の目を楽しませてくれるのが、美術館アトリウムのガラスの外壁を飾る、ベアトリス・ミリャーゼスの巨大な壁画。粘着性のビニールシートでかたどられた草花や装飾文様のモチーフは、まるで熱帯に生息する植物のよう。カラフルで生命力に満ちたこの作品は、美術館のなかから見ると、太陽の光を通して、また別の美しさを私たちに見せてくれます。

ベアトリス・ミリャーゼス 『マラコロウコ』2008

ベアトリス・ミリャーゼス 『マラコロウコ』2008

「トロピカリア」という概念を提唱し、ブラジルの60年代のアート、音楽、映画などを巻きこむ一大文化運動の中心的人物として活躍したエリオ・オイチシカ。彼の代表作『パランゴレ』は、壁にかけてある色とりどりのケープのような布をまとい、ヘッド・ホンから聞こえてくるブラジルの音楽に合わせて踊りましょう、という作品です。ビニールのような身近な素材でできたケープはまさに、着る色面絵画。鑑賞者が作品を身につけて踊るアートは、カーニバルの国ブラジルならではの発想かもしれません。

エリオ・オイチシカ 『パランゴレ』

エリオ・オイチシカ 『パランゴレ』

アート・ユニット、アシューム・ヴィヴィッド・アストロ・フォーカス(avaf)のエンターテインメント空間もトロピカル。壁面に描かれた色と形が爆発する、「トロピカル・パンク」ともいうべきこのカオスな部屋では、壁面に投影された映像を見ながら、ヘッド・ホンから流れる音楽を聴くことができます。これらはブラジルの音楽史に残る多様なポピュラー音楽。avafのプラジル的空間を体感しながら、ゴキゲンな音楽も楽しみましょう。

アシューム・ヴィヴィッド・アストロ・フォーカス(avaf) 『absurd vanilla anus flavor』2008

アシューム・ヴィヴィッド・アストロ・フォーカス(avaf)
『absurd vanilla anus flavor』2008

このほか、路上のグラフィティから出発し、ユーモラスでファンタスティックな作品を描く双子の兄弟、オスジェメオスや、色とりどりの紙片を蟻に運ばせる映像がチャーミングなリヴァーニ・ノイエンシュヴァンダー&カオ・ギマラエスの作品など、会場はトロピカルな色彩に満ちています。

オスジェメオス 『ライフがフォームになるとき』2008

オスジェメオス 『ライフがフォームになるとき』2008

リヴァーニ・ノイエンシュヴァンダー&カオ・ギマラエス 『灰色の水曜日/エピローグ』2006

リヴァーニ・ノイエンシュヴァンダー&カオ・ギマラエス
『灰色の水曜日/エピローグ』2006

ファッション&建築的な作品も

また今回は、ファッション・デザイナーがアーティストとして参加しています。たとえば、ロナウド・フラガは、大好きなボサノヴァの歌手ナラ・レオンをテーマに、2008年の春夏のコレクションを発表しましたが、今回もボサノヴァを歌う女性の映像と、服のデザインを描いたインスタレーションを発表。コケティッシュな頭部を持ったハンガーに、布に描いたデザイン画がさがる空間には、キュートな女の子の世界が広がっています。

ロナウド・フラガ『愚かさ』2008

ロナウド・フラガ『愚かさ』2008

刺繍やアンティークレースなど、ハンドクラフトが施されたカラフルでロマンティックな服が知られるイザベラ・カペトは、「Maria Bonita」などのブランドのデザイナー。今回彼女が出品しているのは、4.5メートルの布を金属ビーズやスパンコールで覆いつくしたタペスリーです。一見ゴージャスですが、よく見ると金属製のかわいい人形なども縫いこまれた、遊び心あふれる作品です。

展覧会では、建築物のような作品も観ることができます。なかでも、高さ約19メートルという美術館の吹き抜け空間をいっぱいに使って、見る者を圧倒してやまないのは、エルネスト・ネトの巨大なインスタレーション。白い布に発砲スチロールなどを詰めて上から吊るしたこの作品は、ネトが近年、パリの歴史的建造物パンテオンで行なって話題になった『リヴァイアサン・トト』というインスタレーションが基になっています。まるで列柱が林立する大聖堂のなかに迷いこんでしまったかのようなこの作品は、その下に座って空間そのものをゆっくりと味わいたいインスタレーションです。

エルネスト・ネト 『(リヴァイアザン・トト―指より)リキッド・フィンガー・タッチ』2008

エルネスト・ネト
『(リヴァイアザン・トト―指より)リキッド・フィンガー・タッチ』2008

このほか、金糸だけで交差する柱を浮きたたせたかのような、ため息が出るほどに美しいリジア・パペのインスタレーションや、金属の柱や足場をモチーフに近未来の都市建築をつくりだしたようなアナ・マリア・タヴァレスの映像作品なども必見です。

リジア・パペ 『Tréia I.C』2002/2008

リジア・パペ 『Tréia I.C』2002/2008

アナ・マリア・タヴァレス 『通風孔(ピラネージに)』2008

アナ・マリア・タヴァレス 『通風孔(ピラネージに)』2008

不思議な生け花スピーカー

東京都現代美術館では、「ネオ・トロピカリア:ブラジルの創造力」のほか、藤原 大 + イッセイ ミヤケ クリエイティブルームと、ブラジルでプロダクトデザインを手がけるカンパナブラザーズが、それぞれブラジルの都市や自然から発見した色をもとにクリエイションを行なった「カラーハンティング ブラジル」というプロジェクトも紹介されています。

ここで注目したいのは、藤原 大 + イッセイ ミヤケ クリエイティブルームが出合ったという、世にも不思議な生け花スピーカー『Jungle Phone』。航空会社のエンジニアである古賀敬司氏が発明しました。「ジャングルへの通信装置」として展示されているこの作品は、装置の穴にオーストラリア原産の「カークリコ」という植物を生けてその葉に耳を当てると、その大きな葉から音楽が聞こえてきます。音楽を聞くために葉に耳を近づける行為は、植物とコミュニケーションをしているよう。草木から聞こえてくる音楽は、あなたの心を優しくしてくれることでしょう。

古賀 敬司 『Jungle Phone』

古賀 敬司 『Jungle Phone』

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