片岡 真実
森美術館 チーフ・キュレイター
2008年に北京オリンピックのメインスタジアム『鳥の巣』の設計を、スイスの建築家ヘルツォーク&ド・ムーロンと共同で手がけ、一躍その名を世界に知られるようになったアイ・ウェイウェイは、中国で最も刺激的なアーティストです。彼は、美術だけでなく建築、デザイン、出版、展覧会の企画など、ジャンルを超えた表現を行なっていますが、そのさまざまな創作活動の底には、自分とは何者なのか、自分たちの行為の理由は何か、また自分たちはどこから来てどこへ行くのか、といった、人間の存在に関する根源的な問いかけが共通して見られます。
また、1952年に中国を代表する詩人アイ・チン(艾青)を父に北京で生まれたアイ・ウェイウェイは、反右派闘争の煽りを受けて下放された父、家族と一緒に新疆ウイグル自治区などで16年間暮らしました。1976年から1981年までは、北京電影学院に入学、中国初の前衛芸術家集団「星星画会(The Star)」の展覧会に参加するなど、北京で活動、続いて1981年から10年以上、ニューヨークを中心にアメリカで創作を続け、1993年帰国、現在は北京に拠点に活動しています。
今回の展覧会は、そのようなアイ・ウェイウェイの1990年代以降の活動を、新作6点を含む26点の作品を、「基礎的な形体とボリューム」、「構造とクラフトマンシップ」、「伝統の革新と継承」の3つのセクションに分類して紹介、作品の背後に広がる歴史的、文化的、美術的な文脈の交錯を紐解きます。 「基礎的な形体とボリューム」では、ミニマルアートを想わせる一連の立方体、切頂二十面体などの立体作品、432個の中国茶のブロックで家をつくった新作インスタレーション『茶の家』などが展示されています。
「構造とクラフトマンシップ」では、シンプルな形体に驚くべき工芸技術が隠された《地図》シリーズ、1997 年以降続けられている《家具》シリーズ、そして美術・建築・デザインの領域を横断する立体作品『月の箪笥』を見ることができます。
「伝統の革新と継承」では、新石器時代、漢や唐時代の壺をモチーフにしたシリーズ、明時代の建築物のパーツを再構成したインスタレーション『断片』などが展示されています。 また併せて、2007年にドイツのカッセルで行なわれた「ドクメンタ 12」に1001人の中国人を招待した《童話》プロジェクトのドキュメント映像(2時間30分)、2008年5月の四川大地震で校舎の倒壊によって亡くなった児童生徒の名簿をブログで公開するなど、アイの関わる人権運動から生まれた『蛇の天井』も見ることができます。さらに、6メートルの高さに及ぶ新作の『シャンデリア』も入り口で観客を出迎えます。














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