今年初めて、ヨコハマ国際映像祭2009が2009年10月31日(土)~11月29日(日)の30日間、開催されます。
会場は、3つのメイン会場とふたつのサテライト会場から構成されています。メイン会場である新港ピア、BankART Studio NYKでは、おもに映像作品の展示、ライブ、フォーラム、ワークショップが、東京芸術大学大学院 映像研究科 馬車道校舎では、土日限定で映画の上映やトークイベントがあります。そして、サテライト会場の野毛山動物園と黄金町バザール1の1スタジオでは、作品の展示と映画の上映が行なわれます。
いつ寄っても新しい何かに遭遇することができるので、プログラムをチェックしてお目当ての日に訪れたいものです。
メイン会場のひとつ、BankART Studio NYKでは、国内外の映画監督やメディアアーティストによる展示が行なわれています。 まず1階では、映像の音を楽器として使った、実験的なサウンドパフォーマンスで高い評価を受けているクリスチャン・マークレー。『Video Quartet, 2002』は、映画の引用によってクラシック音楽の四重奏を奏でる作品です。その優雅でうっとりするようなカルテットに、追いかけ合うような映像のおもしろさが加わった独特の世界に、観客は引き込まれます。
クリスチャン・マークレーの『Video Quartet, 2002』
上の階にあがると、右手にはスペインの作家、パブロ・ヴァルブエナの『Extension Series (Yokohama)』があります。壁の角に映し出されるグラフィカルな建物が、大きくなったり小さくなったりだんだんと形を変えていきます。これにより、今まで意識していなかった壁や空間が意識されるのです。メディアアートというと、画面のなかだけで展開していくようなものが多いのですが、彼の作品はメディアと空間の関係性がとてもうまくマッチしているように感じられます。
パブロ・ヴァルブエナの『Extension Series (Yokohama)』
左手では、ヂョン・ヨンドゥの『シネマジシャン』が展示されています。「舞台上で繰り広げられる世界」と「舞台を鑑賞する寄席の世界」のふたつの視点を見せることで、舞台上の緊張感とそのまわりの演出の交差が、観客により多角的な見方を示唆しています。
ヂョン・ヨンドゥの『シネマジシャン』
また、さらに部屋を進むと、シャルタン・アケルマンの『ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン』やワン・ジャンウェイの『人質』やスティーブン・ピピンの『Ω=1』などの展示を見ることができます。
シャルタン・アケルマンの『ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン』
3階にあがると、まず目に飛び込んでくるのは、夥しい数の蛍光灯が一面についてある大きな箱。目がくらむような眩しさを避けるように反対側の入り口に回ると、それがアルフレッド・ジャーの代表作『静寂の音』だということがわかります。この作品は、かの有名なピュリツァー賞を取った写真家を巡る議論をモチーフにしており、ただ8分間文字が順番に現れるのですが、それはまるで、落ち着いた低い声で朗読を聞いているかのような体験です。
アルフレッド・ジャーの『静寂の音』
次の部屋の奥には、藤幡正樹の『シミュレーション エコーズ』があります。脇に置いてある眼鏡を掛けて作品の前に立つと、映像が立体的に浮き上がって見え、そのダイナミックな動きと映像に合わせた音から目が離せなくなります。残念なことに、この作品は事情により撤去されてしまったのですが、今後ほかの場所で見られることを期待しましょう。
さらに奥に進むと、右手に隣り合った大きなふたつのスクリーンが目に入ります。これは、アーナウト・ミックの『スクールヤード』という作品。学校の校庭や校門などでの日常の何気ない出来事が、スローモーションを使った客観的な視点と主観的な視点の交差により、物語性を帯びて見えてきます。また、映像に音がないことにより、作品がよりドラマチックなものに仕上がっています。
新港ピアでは巨大な倉庫のような空間が4つの部屋に分かれています。入り口では、細谷宏昌(東京芸大佐藤研)+うえ田みお(ユーフラテス)監修・佐藤雅彦による、インタラクティブな時計『I’m a minute』がお出迎え。
細谷宏昌(東京芸大佐藤研)+うえ田みお(ユーフラテス)監修・佐藤雅彦の『I’m a minute』
次の展示室では、メディアアートの歴史を簡単に説明しています。最初は映像の起源となった影絵をモチーフにしたエコ・ヌグロホの『頭痛の種』。機械仕掛けの大きな装置でつくられたキャラクターが観客を歓迎してくれます。
エコ・ヌグロホの『頭痛の種』
次に、ナム・ジュン・パイクを思わせるようなビデオがたくさん並んだ「映像が生まれるところ」(Priminal Images)、そして、インターネットに関連した作品へと流れていきます。ここでは、インターネットと文字を使った、ニコニコ動画や中ザワヒデキの『二三字三九行の動的文字座標型絵画第三番』などが展示されていますし、八谷和彦の『見ることは信じること』は、今回の展示では、ツイッターを使用し、リアルタイムに発信した文字情報を展示場で流しています。これは、見に行くときによって違う内容になってるインタラクティブ性の強い作品です。さらに、安野太郎は映画のための音楽ではなく、音楽のための映画として、『音楽映画・第九番』を制作。この“音楽”はまるでつぶやきみたく、とても現代的な映像のつくられ方といえるのではないでしょうか。
手前の作品は「映像が生まれるところ」、奥のはニコニコ動画や中ザワヒデキの『二三字三九行の動的文字座標型絵画第三番』。
八谷和彦の『見ることは信じること』
ところで、ヨコハマ国際映像祭の一環として「CREAMコンペティション」も開催されました。世界42カ国から922件の応募があり、その形態も、映画、アニメーション、ドキュメンタリー、実験映画、映像パフォーマンス、インスタレーションなどさまざま。そのなかから、CREAM大賞として松島俊介の『VOICE-PORTRAIT~self-introduction~』が選出されました。これはインターネット上に存在する他者の自己紹介映像の音声に作家本人が模倣したセルフポートレート映像を組み合わせるという作品。Tumblrのリブログという機能を生かすことで、多くのユーザーへ広がることを目的としています。
松島俊介の『VOICE-PORTRAIT~self-introduction~』
続いて、3番目の部屋であるシアタースペースでは、映像作品の上映やフォーラム、ライブパフォーマンスなどが行なわれます。 そして最後の「ラボスペース」は、人々が参加できるイベントやトークショー、実際に映像を制作するワークショップなどが開催される実験スペースです。この映像祭のテーマである、「実際にワークショップなどに参加することで映像というメディアを考える」という観点から考えた場合、もしかすると、このラボスペースが一番のメイン会場といえるのかもしれません。
ラボスペースの様子。
ほかにも、東京芸大の馬車道校舎や野毛山動物園、黄金町バザールなどでもさまざまな映画、映像が上映され、多くの作品が展示されています。ぜひ、自分が興味のあるイベントを探して参加してみてください。
写真:池田晶紀、ただ、川瀬一絵(ゆかい)














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