Vol.2 バリー・マッギー展

バリー・マッギー展
【開催期間】 2007年6月2日(土)〜2007年9月30日(日)
【会場】 ワタリウム美術館&野外展示

街角を切り取って、そのまま展示空間に持ち込んだかのようなインスタレーション。「TWIST(ツイスト)」というダグネームで知られるグラフィティ・アーティストのバリー・マッギーは、現在、世界のアート界から注目されています。ワタリウム美術館で開催されている日本初の彼の個展を訪れてみました。

空間全体がひとつのインスタレーションに

作品は、ワタリウム美術館の2階〜4階に展示されているだけでなく、道路を挟んで美術館の向かいに建つ建物もひとつの屋外展示となっています。まずは美術館の4階へ。カラフルな幾何学模様が描かれたパネルや何枚もの額縁が組み合わされ、彫刻や植え込みの陰から伸びている腕がグラフィティを描き、空間自体がひとつのインスタレーションとして構成されています。

3階には、57台のテレビと、何台ものビデオデッキやDVDデッキのインスタレーション。すべてニューヨークやサンフランシスコの町で拾ったものだそうです。ビデオ映像が流されているテレビもあれば、映らないテレビも混在して存在感を放っています。「モノは使えなくなったら捨てられてしまう。でもちょっと待ってよ、と言って、そこに違った価値観をつけていくところが僕には新鮮でしたね。当たり前のことを当たり前で済ませない。使えないテレビやデッキに絵を描けば、ゴミではなくなる」(和多利氏)

捨てられたDVDデッキのひとつひとつに絵が描かれている

美術館の中でエネルギッシュなストリートを表現する

幾何学模様に覆われた壁に圧倒されるのは2階の空間。300枚ものパネルにすべて手描きされたパターンで、小さな隙間ももらさず埋め尽くされています。その脇では、ひっくり返って白煙を吐くトラックの上で、肩ぐるまされながらグラフィティを描くストリートの若者たち。カラフルで繊細な表現と大胆で力強い表現が混じり合いながら、強烈なエネルギーを発しています。

グラフィティでテーマにしているのは「街が排除しようとしているもの、隠そうとしていること、存在していないふりをさせられているものを取りあげ、みんなに見せることだ」と語るバリー・マッギー。グラフィティだけではなく、彼の作品全体に「街と人のかかわり」に対する問いかけが感じられます。

隙間なく壁面をおおいつくすカラフルな幾何学模様

「彼がなぜグラフィティにこだわっているかというと、現代があまりにも消費社会だからです。広告と人のありかたや、商業主義的なありかたに疑問を提示しているのです。お金を払えば、広告のポスターを街角に堂々と掲示できるのに、僕らが書いたものはなんでいけないの? 迷惑だったら消せるじゃないか、という思いがある。かなり過激な論法ではありますが、人と街の新たなスタンスを提案しようとしていると思います」(和多利氏)

「美術館には限られた人しか行かないけれど、ストリートなら誰でも見られる」とストリートを中心に活動しているバリー・マッギーですが、いっぽうでは、その逆に美術館にストリートを持ち込もうという試みが感じられます。私たちが目をそむけているもの、捨ててしまうもの、排除してしまうもの、そのすべてを拾い上げ、自由で新しい可能性を表現しているのです。

ワタリウム美術館では、期間中は再入場可能なパスポート制を導入しています。8月4日からは過去の展覧会で制作された壁画も展示するそうですので、この機会にぜひ、バリー・マッギーの感じるストリートを体験してください。

バリー・マッギー略歴
1966年、アメリカ生まれ
1991年、サンフランシスコ芸術院卒業。
1992-97年、サンフランシスコ芸術基金、その他のコミッションワークとして、市内各所にて壁画制作を行なう。
1998年、サンフランシスコ近代美術館で巨大な壁画を制作し、同館のパーマネント・コレクションに選定された。また、ミネアポリス、ウォーカー・アート・センターで、初の個展を開催。全米のアート・シーンに衝撃を与えた。
2001年ベニス・ビエンナーレに史上最大のインスタレーション作品を出品。
いっぽう、「TWIST」というタグ名で知られるグラフィティ・アーティストとしての彼の活動は、あくまでもストリートやコミュニティに対する意識を持ち続けることで継続された。それらは、ストリートで生きる人々をテーマに、つくり続けられている。

板やボトルに描かれた悲しげな表情の人物も彼の作品の特徴だ