
【開催期間】 2007年8月17日(金)〜2007年8月19日(日)
【会場】 東京ビッグサイト
毎年、夏と冬にそれぞれ3日間行なわれる同人誌展示即売会「コミックマーケット」。日本全国のマンガファンのためにつくられたイベントは、いまや室内イベントとしては国最大級規模といわれるほどになりました。今回は東京ビッグサイトで行なわれた、通称「コミケ」を訪れてみました。
8月17日、「コミックマーケット72」1日目。酷暑のなか、1日目のみで来場者数17万人を越えたと言われるほどに参加者たちが詰めかけ、お目当てのサークルを目指して奔走していました。この日は、男女問わず人気の高いアニメやライトノベル、RPGゲームの二次創作同人誌がメインですが、「乙女ゲーム」と呼ばれる、女性向け恋愛シミュレーション・ゲームの二次創作同人誌を扱うサークルも大きな規模を誇っていました。小規模ながらも、アニメ、ゲーム、声優を評論する評論誌を発表するサークルも多数参加しており、一般紙では真似できないような、オタク文化を内側の視点でアカデミックに語りあうサークルも多く面白いです。
今回のコミックマーケットでは、創作ゲームや音楽CDなどを扱う創作系サークルが、その需要の高まりから1日目の東館に集められ、大幅に規模を拡大していました。その中でも、この日最も人を集めていたのはサークル「07th Expansion」です。同人ゲームからテレビ・アニメ化、そして現在、実写映画も製作中の大人気サウンド・ノベル・ゲーム、『ひぐらしのなく頃に』を製作した彼らが、新作『うみねこのなく頃に』を発表。買い求める列は、炎天下にも関わらず会場の外数百メートルにまで達していました。同じく東館に配置された人気サークル、「上海アリス幻樂団」も、大人気シューティング・ゲーム『東方project』の最新作『東方風神録』を発表。こちらも数百メートルにも及ぶ長蛇の列をつくっていました。コミックマーケットから生まれたこれらの同人創作ソフトも、いまや一般アニメ、ゲームにも負けない支持を集めており、今後創作系サークルはますます規模の拡大が予想されるでしょう。
オタク文化の象徴だったコミックマーケットは、いまやクリエイティヴな創作活動を象徴する場としても、注目されるイベントに成長しているように感じられました。


2日目は、少年マンガ、少女マンガ、ゲーム、芸能、特撮、映画、音楽、スポーツなどの女性向けジャンルが中心で、客層も約9割が女性。猛暑はひと段落し、身動きが取れないほどの混雑が発生することもなく、比較的快適な1日となりました。
この日の代表的なアイコンは「801(やおい)ちゃん」でしょう。第1巻が30万部を超えるベストセラーとなり、ドラマ化もされた『となりの801ちゃん』(宙出版)の主人公で、普段はごくフツーのかわいい女の子なのに、マンガ・アニメやゲーム、特に「やおい」と呼ばれる男性同士の関係性に「萌える」(ときめく)と我を忘れてしまう、いわゆる「腐女子」と呼ばれる女子オタクです。
ただ、女性向けジャンルの同人誌すべてがこの「やおい」に該当するわけではありません。4コマのギャグマンガやコンサートのレポート本なども同じくらいに人気がありますし、ほのぼのとした3頭身キャラクターの絵本や、ハリウッド映画の名科白集なども見かけました。表現方法はさまざまでも、対象への「愛」を同人誌という形で表現していることはみな共通しています。
大手サークルでは、新刊同人誌をオリジナルのビニールバッグに入れて販売したり、ポストカードなどのアイテムをオマケにつけたり、という工夫がみられたのも女性が多い日ならでは。スペースそのものも、かわいいテキスタイルやPOPなどを使って演出されていました。また、買った本やコスプレ衣装などの荷物を入れるため、小ぶりのキャリーカートを引っぱっている女性も多く見られました。
いっぽう企業ブースでも、女性向けのイベントが数多く行なわれました。前出の「801ちゃん」グッズを販売する宙出版をはじめ、「乙女ゲーム」や人気男性声優によるCDお渡しイベントなどがその代表です。イベントの参加チケットは、始発で並ぶ人もいるほどの激戦区。運良く手に入れた女性は、大好きな声優さんとじかに触れ合える貴重な機会に、顔をほころばせていました。


3日目は、男性向けの二次創作サークルが多く配置される日です。例年、三日間の開催日中でもっとも多くの参加者が集う(今年は三日間全体の参加者のべ55万人中、20万人が参加したといわれている)ということもあってか、「コミケ」=「アニメ・マンガなどのポルノグラフィックな二次創作が流通する場」「ポルノグラフィをめぐって莫大な金銭が一日で飛び交う場」などといった、マスメディア上に流通しているパブリックイメージは、この日の印象を誇張することで作りあげられているのかもしれません。
ポルノグラフィックな表現への期待が日本のオタク表現を活性化させてきたという歴史的な背景がある以上、オタクの表現意欲とポルノグラフィとの関連を直接に表象している場としての「コミケ」のイメージを単純に否定してしまうことはできませんが、3日目の参加者には、アニメーションやゲームなどのオタク系文化に対する評論や批評といったコミケットの黎明期から続いてきた伝統的なジャンルや、ペーパークラフト、ガラス細工、ドール衣装、現代詩などといった、規模は小さいながらも熱心な参加者が多いジャンルにコミットメントしている人間も数多くいるということはもっと広く認知されるべきでしょう。
例えば今年は、"オタキング"の呼称で知られる評論家の岡田斗司夫氏や、アニメーション評論家の氷川竜介氏、2004年に開催されたヴェネチア・ビエンナーレ第9回において、「おたく:人格=空間=都市」をテーマに日本館の展示を手掛けた森川嘉一郎氏などの姿が見受けられました。また、批評ブースには、旧帝大系をはじめ、大学のマンガサークル(学漫)も定期的に参加しています。明日のコンテンツ市場を支える優れた作り手ないし受け手は、いきなりステージに登場するのではなく、こうした安定した土台の中から徐々に生まれてきています。それを安易にもてはやすことも、また、否定することもままなりません。
ゲーム(電源不要)/「つぎはぎ本舗」「魔女の会」

















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