Vol.5 佐藤 卓ディレクション「water」

佐藤 卓ディレクション「water」展
【開催期間】 2007年10月5日(金)〜2008年1月14日(月・祝)
【会場】 21_21 DESIGN SIGHT(東京ミッドタウン内)

水の惑星、地球。「水」は、生命の源であり、私たちが生きていくうえで必要な物質です。ところが、あまりに身近であるせいか、じつは「水」のことをよく知らないのでは? アートやデザインを通して「水」について新しい発見ができる、そんな展覧会に行ってきました。

発想を変えて、水に触れる

会場は、「水の記憶」「水の魔法」「水の履歴」「水の惑星」「水の都市」という5つの柱で構成されています。エントランスで迎えてくれるのは、逆さに傘をもった人物の青いシルエット。「これは、水と人との関わりを象徴しています。本来は、雨水を除けるための道具を逆さにすると、雨水を集めるものになる。水と人の関係を意味し、発想の転換を表現すると同時に、雨水利用を呼びかける世界共通のシンボルマークとして、利用されることを目的に制作しました」(佐藤氏)

「さかさかさ」のシンボルマークは、雨水利用活動のためであれば、誰でも使用することができます(使用に関するルールについては、展覧会公式サイトをご覧ください)。逆さに傘をもっている人を青いシルエットにして使ってもいいそうです。会場ロビーに入ると逆さまの傘が天井からぶらさがっていますので、ここでポーズを取って、撮影した写真をウェブサイトに投稿することもできます。

展示会場となる地階に下りると、目に飛びこんでくるのは、屋外の巨大な青い傘。『猫の傘』と名づけられたこの作品は、猫の視点で見た大きさになっています。そばに落ちている水滴は、ねずみの目線でとらえたサイズ。人間にしてみればほんの1滴の水が、小さい動物にとってどのくらいの大きさなのか実感できますね。

光学レンズでできた水滴。一滴の水も、小さな虫にとっては命取りです
佐藤 卓 『ねずみの水滴』 © Taku Satoh

「デザインによって水を示す」という実験

広い空間に並べられた佐藤卓氏の『水の器』は、水をくみあげる両手のかたちをモチーフとしたもの。水が張られた器を覗きこむと、何が見えるでしょうか。

器を覗いて水と向きあう『水の器』。まるで井戸の底を覗くかのよう
佐藤卓 『水の器』 © water project

また、日本庭園に見られる「鹿威し(ししおどし)」を、超撥水処理を利用して新たに解釈した作品が、原研哉氏の『鹿威し』。不思議な動きをみせる水滴を眺めていると、まるで周囲の時間が止まってしまったかのような錯覚を覚えます。

ステージに踊りでてくるような水滴の動きが印象的
原研哉、大黒大悟、美馬英二 『鹿威し』 © Kenya Hara

同じように超撥水処理を使用しているのが、takramが制作した『ふるまい』です。紙皿の上にスポイトで水滴を垂らして、そっと揺らして水の動きを楽しんでください。

水の分子は寂しがり屋。こうしてみると、なんだか実感します
takram 『ふるまい』 © water project

平成17年度(第9回)文化庁メディア芸術祭で『スノーメール』が審査員推薦作品に選ばれたアラカワケンスケ氏も今回の展示に参加しています。そのひとつ『水の便り』は参加型の作品で、水から思い起こす言葉をその場で携帯からメールで送ると、数分後、足もとの水の流れの中にその言葉が現れるしくみです。さらに会場内のトイレにも作品がありますので、ぜひチェックしてください。

携帯投稿されたあなたの言葉が水の流れに漂う
アラカワケンスケ、三浦望 『水の便り』 © water project

そのほかにも、リアルタイムの水の音が聴こえる『aqua scape』(竹村真一氏、川崎義博氏)をはじめ、水を五感で体験できる作品が数多く展示されています。

バーチャルウォーターという考え方

そもそも佐藤氏が水に興味をもったきっかけは、文化人類学者の竹村真一氏から伺った「バーチャルウォーター」(仮想水)という見えない水の見方でした。「牛丼1杯にどのくらいの水が使われているのか知っていますか? 2,000リットル、牛のエサやお米を育てるための水を含めると2,000リットルなんです。初めて知ったときは、えっ? と思いました」(佐藤氏)

わたしたちの見えない水の消費量がわかります
竹村真一、佐藤卓 『見えない水の発券機』 © water project

ふだん意識することはありませんが、私たちは日本だけでなく、遠い海外の水も消費しているという着想がバーチャルウォーターです。まさに「地球を食べ、地球を飲んでいる」私たち。水問題について考えるときは、地球全体を見つめる必要があります。「蛇口をひねると水が出る。蛇というのは水源のメタファーですが、蛇の口は家にあるけど、では、しっぽや身体はどこにあるのか。私たちは水がどこから、どうやって届くのか見えない状態で生活しているのです」(竹村氏)

地球の水を宇宙的な視点から観てみよう
竹村真一 『水球儀』 © Earth Literacy Program & GK Tech Inc.

知っているようで、じつは何も見えていなかった「水」という存在。なぜ日本は水が豊かなのか、その水はどこから来るのか、そしてこれからの水と人とのあり方とは。「水はユニークでおもしろい物質。水と向かいあってみると、水から教えられることが山ほどある」と佐藤氏が語るように、皆さんも新しい視点で「水」を見つめてみてはいかがでしょうか。

最後に、1点だけ、どこに展示してあるのか秘密の作品があります。見つけたとしても、絶対に内緒にしておいてくださいね!

[クリエイティブチーム] 
佐藤 卓  グラフィックデザイナー、本展ディレクター
竹村 真一 文化人類学者、本展コンセプト・スーパーバイザー
天野 和俊  グラフィックデザイナー
アラカワケンスケ  インタラクティブメディアデザイナー
井出 祐昭  サウンド・スペース・コンポーザー
海藤 春樹  照明デザイナー
takram  デザインエンジニア
藤井 保  写真家


[特別参加]
石元 泰博  写真家
沖 大幹  水文学(すいもんがく)者
川崎 義博  サウンドアーチスト/サウンドデザイナー
原 研哉  グラフィックデザイナー
三浦 望  プログラマー
村瀬 誠  (“ドクトル雨水”)&NPO法人雨水市民の会
METAPHOR  デザイン&エンジニアチーム