
【開催期間】2008年1月18日(金)〜2008年3月2日(日)
【会場】Shiodomeitalia クリエイティブ・センター Expo700
パリのポンピドゥー・センターで企画され、2006年10月にスタートした「FABRICA : LES YEUX OUVERTS 将来を見据えた目」。2007年7月にはラ・トリエンナーレ・ディ・ミラノ、そして同年10月に上海美術館へと続いていった巡回展が日本にやってきました。そこで今回は、Shiodomeitaliaクリエイティブ・センターで開催されている日本展に足を運びました。
展覧会のタイトル中にある「FABRICA」(ファブリカ)は、同展の共催者であるベネトングループがもつ、コミュニケーション・リサーチ・センターの名前です。ファブリカは、ベネトンの創業者ルチアーノ・ベネトンと、広告を通じて縁の深かった写真家オリビエーロ・トスカーニによって、1994年トレヴィゾに設立されました。ここでは、出版や写真といった既存のメディアから、コンピューターグラフィック、インタラクティブメディアにいたるまで、多岐にわたるコミュニケーションデザインの研究を行なっています。
ファブリカの目的は、デザインを志す学生たちに企業での広告の現場を経験してもらうだけでなく、彼らが主体的に、そして自由に研究を行なえるようなプラットフォームを整備することにあります。彼らを通じて新たな文化の創造に寄与するという「産業」と「文化」の融合を目指す挑戦なのです。ここに集う若いクリエイターたちの才能は、入学前の試験のようなかたちで出される課題のセルフポートレイトからもうかがい知ることができます。今回の展覧会では、彼らがこれまでに展開してきた、興味深いプロジェクトの成果が展示されています。

Fabrica,クリエーター多数 『SELFPORTRAITS』 1995-2007年
展覧会から伝わってくるメッセージのひとつに、それぞれのプロジェクトにこめられた鋭い社会批評性が挙げられます。たとえば、6人の写真家の作品で構成されているプロジェクト『I SEE』(2006年)。ここでは、カメラのファインダー越しに私たちと同じ「時」を共有しながらも、異なる現実、異なる文化を生きる人々の姿が克明に映し出されています。たとえば、オリヴィア・アーサーがトルコで撮影した一枚の写真『The Middle Distance』。それは、一見、娘の嫁入りを祝う家族写真のように見えるかもしれません。けれども、実は、伝統的な習慣を残すトルコの家族にとって、嫁入りとは娘との永遠の別離なのです。私たちの日常からは想像できない家族のあり方、それが文化的な優劣とは関係なく、ただ「異なるもの」として提示されています。
『I SEE』 2006年 Olivia Arthur 《The Middle Distance》
一方で、現代社会の抱える問題に対するより積極的な取り組みが、『COLORS NOTEBOOK』(2006‐2007年)や『STOCK EXCHANGE OF VISIONS』(2006‐2007年)です。COLORS Notebookのタイトルにある「COLORS」とは、ベネトンが1991年に創刊した雑誌の名称。2006年には、国境なき記者団(註1)の協力のもと、全ページが白紙の「COLORS Notebook」が世界中に届けられました。このノートを利用して世界各地の人々が自分自身の「COLORS」を編集し、それをファブリカに送り返すというプロジェクトです。
『COLORS NOTEBOOK』 2006-2007年
会場に展示されたアフリカ人女性の作品には、アフリカの一部でいまも続く日常的な部族間差別と性的虐待の現状が記されています。声なき人々にもその思いを伝えてほしい、というプロジェクトの願いがここでも実現されています。
『STOCK EXCHANGE OF VISIONS』はまさに、私たちの未来像(VISIONS)の交換の場です。まるで証券取引所のように複数のスクリーンが設置されていて、このプロジェクトに参加した世界各国の学者たちがもつ、未来へのヴィジョンを見ることができます。

Godfrey Reggio 『EVIDENCE』 1995年
また、ゴドフリー・レッジョのドキュメンタリー作品『EVIDENCE』(1995年)は、日常何気なく見ているテレビが子どもに与える影響を記録した作品。テレビモニターの裏に設置されたカメラが、テレビを見る子どもたちの無表情さを淡々ととらえています。
この展覧会のもうひとつの楽しみといえば、デジタル技術を利用したインタラクティブな作品の数々です。社会風刺的な作品が、写真や雑誌といった既存のメディアを利用していたのに対し、インタラクティブなメディアアート作品は、素直にデザインや技術の楽しさを私たちに伝えてくれます。そんな作品のひとつが、日本人としてFABRICAを経験した石塚展久氏の『LOCUS』です。

Nobuhisa Ishizuka 『LOCUS』 2006年
カメラの前に立つと、私たちの動きが取り込まれスクリーンに投影されます。この作品の特徴は、そうした動きをスクリーン上で1コマ1コマにスライスし、まるで静止画の連鎖のような形に再構成できることです。コマ送りされる映像を見ることで、空間的な動きをいくつかに切り取られた時間の流れとしても理解することができるのです。ここには、「時間と空間という概念をなんとか映像上で表現できないかとずっとこればかり考えてきた」という石塚氏の思考のプロセスが鮮やかに表現されています。

Andy Cameron, Hans Raber, David McDougall, Oriol Ferrer Mesia
『WE ARE THE TIME. WE ARE THE FAMOUS』
また、第9回文化庁メディア芸術祭でエンターテインメント部門大賞を受賞した、フアン・カルロス・オスピナ・ゴンザレス氏の『FLIPBOOK!』(2005‐2007年)も展示されています。スクリーン上で自由にパラパラマンガを描くことができ、オンラインで誰もが閲覧できる『FLIPBOOK!』は、現在では約20万個のアニメーションがアップロードされ、1500万人もの利用者がいます。

Juan Ospina 『FLIPBOOK!』 2005-2007年
制作協力:Enrique R. Grullon, Maik Bluhm, Hans Raber
このようにShiodomeitaliaクリエイティブセンターでは、「FABRICA」の意欲的なプロジェクトの数々が展示されています。皆さんも、イタリアで活躍する若いクリエイターたちの生みだす「デザインの今」を感じてみてはいかがでしょうか?
註1:1985年にパリで創設された、言論の自由と報道の自由の擁護を目的としたジャーナリストによる国際組織。Reporters Without Borders(RWB)。
http://www.rsf.org/





















![vol.16 池田亮司+/−[the infinite between 0 and 1] vol.16 池田亮司+/−[the infinite between 0 and 1]](/museum/oste/vol16/images/bn_vol16.gif)

















