インタビュー

推薦を集めた作品の作者にインタビューしました。

Interview
アート部門『Prince and Migrant Birds』作者:松尾 高弘
『Prince and Migrant Birds』

『Prince and Migrant Birds』(王子さまと渡り鳥)について

――題材にサン=テグジュペリの『星の王子さま』を選ばれた理由をお聞かせください。

今年、全国5ヵ所のデパートで開催された「サン=テグジュペリの星の王子さま展」(TBS主催)で、僕のインタラクティブ・アート表現を使って物語を描いてほしいというお話を頂きました。「星の王子さま」は世界各国で翻訳され、子どもから大人まで愛され続けている絵本です。僕が制作したのは、主人公の王子さまがたくさんの渡り鳥たちに捕まって、自分の星を飛びたち宇宙を飛翔するというシーンで、体験型の映像インスタレーションを制作することになりました。
『Prince and Migrant Birds』(王子さまと渡り鳥)は、王子さまの星を連想させる球体をかかげると渡り鳥たちが浮かび上がり、歩くことで鳥たちが一緒に飛んでくれる風景を映しだします。体験者が絵本の主人公になってその世界に入り込んだような体験ができ、外から見ている人たちにとっては、参加者が絵本の世界にいるかのように感じられる、パフォーマンス的な側面も持った作品です。

――制作過程で特に気をつけた点などがあればお聞かせください。

デパートの展覧会は老若男女問わず多くの方が来場されるので、とにかく楽しんでもらえる作品にしたいと考えました。子ども達には、大人になってもずっと記憶に残るような体験を。お父さんやお母さんには子どもと一緒に楽しめる時間を。そして、お年寄りには今まで見た事も体験した事もない新しい感覚を。そんな思いを込めて制作に取り組みました。例えば、参加する方を限定しないように、インターフェイスをわかりやすく明快にデザインしました。この作品で使っている光の球体のインターフェイスは、光を手で出したり覆い隠したり、動かしたりするものですが、インターフェイスとしての機能と作品性の両方をシンプルに提示できたと思っています。

松尾高弘さんと「インタラクティブ・アート」

『Prince and Migrant Birds』――松尾さんにとっての「インタラクティブ・アート」とは何かをお聞かせください。

僕にとってのインタラクティブ・アートは、自分の描く世界や表現を、体験する人の心と体の両方に伝えることができるとても楽しい表現方法です。バーチャルリアリティと近い位置にありますが、仮想ではなく、非日常の世界や感覚を体感できるようにすることが制作のテーマです。体験する人にとっては、見るだけ、聞くだけでなく、触れたり動いたり、体を動かしたり、空間の雰囲気に浸ったりと、特別な体験ができる唯一の空間だと思っています。

――作品によって醸し出される雰囲気に特にこだわっていることはありますか?

描く世界を光と影によって構成し、その中に光の色彩を投影することで視覚的な世界を作りあげます。特に一瞬の光の輝きの強さや明滅する時間のタイミング、自然で鮮明な色彩の変化などを強く意識しています。それに加えて音楽と、インタラクティブに反応するサウンドによってその世界を彩ります。それらがシンクロして、さらに参加者の動きがとてもナチュラルな形で重なったとき、美しさや繊細な感覚、楽しさや気持ちよさを、心と体の両方で感じることができると考えています。

――過去にどういった作品を発表してこられたのかご紹介いただけますでしょうか。

映像インスタレーションとしては、光を照らすことで蝶の舞う風景を映し出す『Phantasm』という作品があります。光の風景と闇、動きのある優雅な世界と静寂の世界を、光を照らすことで対話する詩的な作品です。今年2007年9月のアルス・エレクトロニカ「Ars Electronica」でも発表し、アルス・エレクトロニカセンターに、来年までの一年間常設しています。また、2003年の第7回文化庁メディア芸術祭では『Floating Light』という、指輪をつけることで光を生みだすことができる作品を発表しました。他にも天井に張り巡らされた青色LEDが、夜光虫のように人の手に反応して柔らかく光る『Noctiluca』というLEDインスタレーションがあります。
また今年はアートインスタレーションだけでなく、インタラクティブな空間映像のショーウィンドウや、ブライダルのチャペルの演出として、新郎新婦に映像の天使が舞い降りて祝福するインタラクティブ作品などをプロデュースしました。

今後のご活動

――今後のご予定を教えていただけますでしょうか?

今年の2007年10月にアルス・エレクトロニカの上海展「Shanghai eArts Festival (2007上海电子艺术节)」に参加します。その後、大学の歴史のアーカイブデータや資料をインタラクティブ・アートによって提示する作品を発表します。アーカイブとインタラクティブ・アートの融合は、とても可能性のあるテーマだと思っています。またクリスマスの時期に、インタラクティブなイルミネーションによるツリーをプロデュースしたいと思っています。

profile

松尾 高弘 (まつお たかひろ)

1979年生まれ。福岡県出身。体験者の身体動作をCG映像や音、光と融合させるインタラクティブアーティスト。Monoscape代表。いつか心に描いた夢のような空想の世界や、自然の中で体験した過去の記憶を回想し、人の自然な動きによって反応する幻想的なインタラクティブインスタレーションとして創り出す。最近では2007年のアルス・エレクトロニカ「Ars Electronica」において『Phantasm』を発表し、現在、同センターに常設展示されている。

http://www.monoscape.jp/