推薦を集めた作品の作者にインタビューしました。


――まず、多くの人に推薦されたことについて感想をお聞かせください。
びっくりです。作品にインパクトがあるのかな。4年前からさまざまな映画祭に挑戦し続けてきたのですが、その中で自分の作品を覚えて下さっている人がいるんだと思うと、非常に嬉しいですし励みになります。
――今回の短編アニメーション『LOST UTOPIA』ですが、聖書の『失楽園』をモチーフにしているのはなぜでしょうか。
あえて解説するなら、作品を制作するとき、テーマとして「命」がいつも根底にあります。同じ細胞をテーマにした作品『FANTASTIC CELL』は、細胞分裂を繰り返して「命」の世界が誕生し広がっていく作品でした。いわば、細胞版「天地創造」です。細胞が組み合わさって「命」になります。根底に「命」があって、そんな生命の不思議さを表現していきたいと思っています。今回の『LOST UTOPIA』は、『FANTASTIC CELL』の続編です。なので、『天地創造』に続くイメージとして『失楽園』を描くことにしました。人間というものを描きたくて、人間の原罪に迫ろうと思って制作しました。「罪」がテーマです。日本文化の中では聖書に対する馴染みがないので、あまりピンとこないかもしれないけど、そういった中で聖書を題材に表現をするのは、とても意義があるのではないかと思います。
――アニメーションを制作することになったきっかけを教えてください。
大学1年の時、なんとなく入った映画館で、チェコの短編アニメーションを初めて見たときに、とてもぞくぞくする感じを味わって衝撃を受けました。今まで知っていたテレビアニメにはない表現で、「奇妙な世界」を覗いてしまった感じでしたね。その後、恩師の片山雅博先生から、大学の授業でさまざまな表現のアニメーションを見せてもらい、その「奇妙な世界」にすっかり魅了されアニメーションをつくり始めました。授業の課題だからつくるとかではなくて、もう無我夢中になって作画してましたね。あと、その年は山村浩二さんの『頭山』がアカデミー賞にノミネートされたんですけど、そのニュースは、これからアニメーションを始める自分にとっては大きな衝撃でした。
――おすすめの作品や作家、または影響を受けているものはありますか?
強い影響を受けたのは、山下清『清の見た夢』、タイガー立石『とらのゆめ』(絵本)、ディズニー制作の実写映画『オズ』です。いずれも幼少期に見たものばかりです。アニメーションをつくるようになってから影響を受けたのは久里洋二さんですね。特に『寄生虫の一夜』が好きです。あと、今回のアヌシー国際アニメーションフェスティバルに参加した際に、山村浩二さんの新作『カフカ 田舎医者』を拝見したんですけど、観ている自分がぐいぐいと作品の世界の中に引っ張り込まれて、見終わった後、現実の劇場の座席に自分が戻ってくるのに一瞬時間がかかるような余韻がありました。11月の劇場公開を、また見に行くつもりです。
――最後に、これからの活動予定を教えてください。
現在はniftyのサイトで定期的に作品を配信しています。仕事としてアニメーションをやっていく場合、CMやテレビの中でしか活躍の場はないと思っていたので、作風などから自分が仕事としてアニメーションをやっていくのは難しいと感じていました。でも、インターネットでの仕事といった、新しい活躍の場があるという可能性に気づきました。また、仕事ではなく、新作を現在制作中です。できるだけ多くの人に、短編アニメーションのおもしろさに触れてほしいですし、これからも同世代の作家とお互いに意識しながら、いい作品を作っていけたらいいなと思っています。「奇妙」なものに魅了されながら、「奇妙」なものをつくっていこうと思います。
水江未来・細胞アニメーション劇場
http://neom.cocolog-nifty.com/republic/devour_dinner/
水江 未来 (みずえ みらい)
1981年、福岡県出身。2007年、多摩美術大学大学院美術研究科 博士課程前期(修士)デザイン専攻グラフィックデザイン研究領域内アニメーション所属/修了。現在、主にアニメーション・イラストレーション表現を中心とした作家として活動。また、大原高等学院・アニメーションコース講師として勤務。