推薦を集めた作品の作者にインタビューしました。


――『DARKER THAN BLACK ―黒の契約者―(以下DTB)』の半年にわたる放送もいよいよクライマックスですね。いまの率直な感想を聞かせてください。
いざ放送が始まっちゃったらあっという間に終わっちゃうなあという感じです。今は夏休みが終わる直前の小学生みたいな気分になっています。宿題も終わったような気になってるんだけど終わってなくって、みたいな(笑)。ちょっと気が抜けててヤバい、そんな感じになってますね。しっかりしないとな(笑)。
――このような作品をつくろうという発端は、もともとはどこにあったのでしょうか?
確か『ハガレン』(TVアニメ『鋼の錬金術師』)のときに、BONESのプロデューサーの大薮芳広と、ANIPLEXの大山良さん、あとMBSの丸山博雄さんとで「オリジナルの作品を若手だけで一本やろうや」という話になったんです。そこでなぜか若手でもないのに僕にお声がかかりまして(笑)。大山さんが、人類が進化していく超能力ものがやりたいなあという話をしていて、僕はちょうどその頃スパイものがやりたいというのがあって、なんか折衷案ができるんじゃないかなと、というところで始まりました。
――東京を舞台にしていて、ディティールに凝った箇所が多数見られました。実際にロケにも行かれたんですね。
リアリティーを出したかったのはもちろんですが、なるべく作業を省略化できないかなっていうのがあって。写真を撮ってきてそのままレイアウトを出しちゃえみたいな(笑)。設定を起こすにはカット数も少ないし、作業のコストパフォーマンスも悪いので、写真をそのままつかっちゃってくださいと。美術のほうは大変だったと思います。せっかく東京を舞台にしてるんだったら現実にある場所をいくつか拾って出していきたいなあと思ってたんだけど、手近にあったから使っちゃおうっていうのまでブログに紹介されちゃって(笑)。なんでこの場所まで突き止められてるんだ!?って困っちゃいましたけど。
『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』 公式ブログ
http://darker.cocolog-nifty.com/
――そういった契約者を含めてさまざまなキャラクターが登場していましたが、監督の印象に残っているキャラクターはいますか?
みんな印象に残っていますが(笑)、なかでも1話と2話に出てきた千晶(篠田千晶)というキャラは、僕の頭の中では実際の世界の中に実在する、生きている人間のように出来上がってましたね。あのシナリオは1年くらいずっと抱え込んでいたので。最初にぱっと見た人は何のことだかわからないと思うんですけど、重要なキャラかと思ったら2話でもう死んでる。そういう切ない部分は最初から描きたかったというか。誰も悪いわけじゃないのに、誰かが罪を背負ってるみたいな話が多いですね。
――全体的に国際色豊かなキャラクターが登場しますね。
最初に東京を舞台にしたスパイものにしたらどうなるんだろうっていうのがあって、今より外国人が増えていて諜報戦が行なわれている場所なんじゃないかなと思いまして。そうなると外国人だらけになってしまいました。ああいう海月荘みたいなアパートって、今はあまり日本人が住んでないらしいってのを聞いてですね。ぼくも昔、鷺宮あたりで散歩してまして、いきなりああいうアパートの窓から外国人の方がヌっと顔を出したりして驚いた事がありました(笑)。
――1話の黒が海月荘に初めて来たシーンは監督の実体験でしたか!
――次に手掛けるとしたらどんなものをお考えなのでしょうか?
『DTB』は意外とやりたい放題なんでもできちゃった作品だったんです。変なギャグテイストものもできちゃったし、暗いのものも全部同居できたし、そういうところでは自分の集大成的なものになったかなと。まだ消化しきれてない設定もあってその辺りをなんとかしたいなと思いつつも、半年やったから疲れたな、みたいな(笑)。もうちょっと続きをやりたいけど、ぜんぜん違うものもやりたいし……みたいな葛藤の真っ最中ですね。
――では逆に、『DTB』でもっとやってみたかったな、というところは?
メインのストーリーに絡まない話を単発でもっとやりたかったなと。7話と8話の探偵ものみたいな人情話を単発としてちゃんとやりたかったんですが、やってみると意外なことに全部メインと繋がっちゃってアレ?ってなりました(笑)。隙間は空いてたはずなんだけど。
――最後に、今回推薦していただいた方々に向けてメッセージをお願いします。
いままでファンの方に評価されることはほとんどなかったんであまり実感が沸かないんですけど(笑)、見ていただけたっていうのは本当嬉しいことだな、って思います。アニメーションと現実とは違うものがあって、そのあいだには線を引いて見なきゃいけないかなと思うんですが、ただ、それをわざと曖昧にするようなつくりにはしてました。アニメーションなんで、見て楽しんでもらえればと思っています。
岡村 天斎 (おかむら てんさい)
1961年生。早稲田大学理工学部卒。大学卒業後にアニメーション制作の道に入り、マッドハウスの川尻義昭作品に多数参加した経歴を持つ。その後、絵コンテ・演出など幅を広げ、現在はフリー。主なTV・OVAのシリーズ監督作としては、『メダロット』、『人造人間キカイダー THE ANIMATION』、『WOLF’S RAIN』など。最近作は『Project BLUE 地球SOS』を監督した。劇場監督作としては『MEMORIES-最臭兵器』、『劇場版 NARUTO-ナルト-大活劇! 雪姫忍法帖だってばよ!!』がある。